美術館について

館長からのあいさつ

那須弘一の記念館が建てられたら、と夢を描くようになったのは、4年ほど前のことです。
彼の静謐な作品を味わうには、私の居住空間は雑多すぎていました。生活の場と切り離したスペースが不可欠です。
それから2年ほど、いくつか考えてみました。既存の記念館の一部を借りられないかとお願いして断られたり、公的な助成を得る方法を考えたりしました。
色々思いめぐらした後、自分の家を改造するのがベストと考えたのです。
弘一が晩年を過ごした家ですし、おそらくこれから10-20年は私がいる場所でしょうから。
テレビのリフォーム番組に応募しようかと思ったこともあります。驚くほど安い費用でとても素敵に改造するし、那須弘一の宣伝にもなるかもしれないからです。でも、はたしてスタッフに弘一作品の価値を理解してもらえるか?
弘一を高く評価して、作品を展示してくださった、建築士ご夫妻に御相談してみると、大喜びで引き受けてくださったではありませんか!2年前のことです。それから、西嶋さんご夫妻は、心血を注いで美術館を造り上げてくださいました。お二人に加えて、門野さんも感動的な設計をしてくださいました。
さらに、私の老後を豊かにすべく、居住空間も快適におしゃれに改造してくださいました。趣味の茶道でお客さまをもてなせるように、茶室までできたのです!
ご夫妻、門野さん、細かい改造をしてくださった西嶋潤さん、丹念な大工仕事をしてくださった職人さんたちに対する感謝と尊敬の念で、私の胸はいっぱいです。
弘一亡き後、2006年に西嶋さんの画廊で開かれた個展について、以下のホームページをご覧ください。これがきっかけで、弘一作品10点が、出身地の浦和にある埼玉県立近代美術館に収蔵されることになったのも、ありがたい思い出です。
https://nasukoichi.com/spica/

どうぞ、皆様、弘一作品に囲まれて、非日常的な癒しのひと時をお過ごしください。

2016年12月
那須妙子